よくやるよ、と呆れてため息が出た。
ジュリアスは傷による発熱で意識が朦朧としているはずなのに、人前に出れば熱どころか傷の痛みもなど無いかのように、胸を張り堂々とした姿で指揮を取っている。まるで狐に化かされている気分だ。
先程まで弱った姿で水がほしいと行っていた人物と同じとは、とても思えない。
「テン、先行しすぎだ。下がれ。スリーはその場で待機。ふむ、やはりこちらが得ていた情報よりも伏兵が多いな」
司令官席で指示を出すジュリアスは、想定内だと言いたげに口元に笑みを浮かべ、どこまでも余裕を崩さずに言った。
得ていた情報より多い?多いなんてものじゃない、軽く3倍はいる。
どう考えても、これは罠だ。
ブリタニア最強の騎士であるラウンズを一人でも倒すことができれば、ブリタニアに大きな打撃を与えれるだけではなく、敵の士気は一気に上がる。ここでもしラウンズ2人仕留めることができれば、負けると決まっていたこの戦況を一変させることも可能となる。3人なら勝ちが決まる。敵からすれば、起死回生の一撃になりえる戦局なのだ。
だからブリタニアに偽の情報をわざと流し、少ない兵力だと錯覚させ、その油断を突いて・・・。
「僕が出よう」
スザクの言葉に、ジュリアスは僅かに目を細めた。
ランスロットが出れば、この戦力差も覆せる。
最初の情報通りなら、戦場はテンとスリーで足りている。だからセブンはジュリアスの護衛をと言われおとなしくここにいたが、もうそれが許される状況ではないだろう。
スザクの声に反応したのはジュリアスだけではない、この司令室にいるブリタニア軍の将校たちもだった。イレブンであるスザクでも、戦力として使えるだろう。ならばこの戦況を十分覆せる。その期待の眼差しが一斉に向けられた。
ラウンズの戦場で負けがあってはならない。
だからこそこの戦場の展開に皆焦っているのだろう。
「この程度の差で何を焦っている?テンとスリーだけで十分すぎる戦力だとは思わないか?だが、そうだな、せっかくだから動いてもらおうか、セブン」
十分すぎる戦力?どこがだ。
戦況はどうみてもブリタニアが不利だということを示している。
自分の予想を外れ、負けそうだということを認めきれず、強がりを。
体調不良だって隠す男だ。その程度の嘘平然と吐けるだろうが、嘘で戦局は覆らない。3人出れば勝てる戦で、わざわざ負ける必要はない。
「では、失礼する」
苛ついても仕方がない、ランスロットのところへ行かなければ。
まずは、この戦場の主導権を握るのが先だ。
そう思い踵を返したのだが。
「どこへ行く?お前の戦場は、ここだ」
掛けられた言葉の意味がわからず、スザクは足を止め振り返った。
「聞こえなかったか、ナイトオブセブン。お前の戦場は、ここだ」
ジュリアスは、繰り返し告げた。
司令官室は、不安をにじませざわめいた。
「言っている意味がわからないんだが?」
「わからないか?では、お前にもわかるように説明をしよう」
そういうと、ジュリアスは勢い良く右手をあげた。
全員の視線が、ジュリアスに向く。
「おかしいと思わないか?我がブリタニア軍の索敵をかいくぐり、我軍の情報網を欺き、倍以上の兵を潜伏させる。そんな芸当、可能だろうか?」
そう言いながら、ジュリアスは徐々に右手をおろしていった、その手は誰かを指し示すように人差し指だけ突き出しており、胸の高さで下ろすのをやめた。
「不可能とは言わない、が、今回の件はあまりにも不可解な点が多すぎた。この私を謀れると思っているのだから、よほど自身があったのだろう」
ざわざわとあたりはざわめいた。
内通者・・・いや、スパイがいるといいたいのだろう。彼が指し示しているのはモニターか?人か?誰を、指している?
彼の指の先には多くの軍人がいたのだが、彼はその指をゆっくりと、右へ、左へと動かした。こうすることで、誰かの反応を見ているのか?ということはまだ誰かまでわからない?もしかしたらハッタリで、そんな人物はいないのかもしれない。
「だが、穴が多すぎた。ツメが甘すぎるんだよ。こちらを罠にはめるため、この程度の兵を用意していることなど最初から解っていた。私も、陛下もな」
ざわりと、驚きの声が上がる。
読んでいた?
この状況を?
「セブン、この司令室にいる全員を捕縛しろ。最前線にいながら、敵に寝返った裏切り者達だ。手加減は不要、陛下より処刑の許可も得ている」
「・・・全員?」
まさか、と声を上げようとした時、聞き慣れた金属音が耳に届いた。
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※オブゼロジュリアス外見※
ジュリアスのラウンズ服はほぼ亡国のままですが、マントだけはゼロマントのように前が合わさるようになっており、左腕は見えません。
オーバーアクションする時は右手を使うので、そちらのマントはよくめくれてますが、左側は死角になったまま。
眼帯は、自分でやる時はシンプルなタイプを、スザクに手伝ってもらう時は亡国タイプを着けてます。